40過ぎて「よしもとのお笑い作家学校」に入ってみた【2】

 

40過ぎて小学校に入ってみた

 

入学に試験はなかったが、面接はあるという。

よしもとの東京本社は、新宿の飲み屋街として知られるゴールデン街のすぐ近くにある廃小学校の校舎を借りている。

コンテンツ制作会社の発想として、これはいいね! と感心した。

教室や校庭がそのまま使えるため、よしもとの番組にも頻繁に出てくる。

入口には警備員さんが常駐しているのだが、面接だとかナンとか言って社内に入っていったような記憶がある。

社内に入るとロビーのような空間があり、よしもとのパチンコ台などが置かれていた。また、ここでネット番組などの撮影が行われていることも多かった。

その先には普通の会社と同じような受付があり、用件を告げると入館証がもらえる。

指定された教室の前の廊下で面接時間を待っていると、小学校の校舎なので本当に学校の面接に来ているような気にもなる。

体はオジサン頭脳は子供。真逆な江戸川コナンみたいな、40過ぎて学校の面接を受けるのも貴重な体験だなと感じ入っていたら、順番が来て教室に入った。

面接はふたり同時というやり方で、自分の隣は高校卒業年齢くらいの女の子だったかな。

YCCには製作現場のスタッフ育成コースと作家コースがあり、彼女はスタッフ育成コース志望である。

面接官は恰幅のいい体格で、年齢は30台半ばから後半くらいだったっけな?

この後すぐにわかるのだが、この人はYCCの現場責任者のような立場で、学校に例えれば学級担任から学年主任的な役職といえようか。

今後この人は“Aさん”として話を進めていきます。

(※人物名は便宜上アルファベット順に付けていくだけで、実際の氏名とはまったく関係ありません)

面接だから自己紹介と志望動機を語るわけだが、「今までずっと出版業界の仕事をやっていたんですけど、もともと若い頃、映画やお笑いをやっていたので‥‥」と前述した理由をありのままに話した。

Aさんいわく、40過ぎの人も今まで何人か入ってきたけど、周囲に溶け込めず「なんだアノおっさん」的な扱いを受けてフェードアウトしていく人が多いから、イジられたりしたら積極的に乗ったりして周囲に馴染んだほうがいい、的なアドバイスをされた。

いかにもありふれた会社内処世術的なアドバイスだが、いま思えば、よしもと社員としてのAさんの考え方を、非常にわかりやすく端的に顕す言葉だったように感じる。

なぜ、そう感じたのかについては、今後ダラダラと語っていきますので‥‥。

この時の会話で今でも覚えているのが、自分からはそういったことに一言も触れていないのにも関わらず、唐突に「企画力や発想力を磨きたくて来たんですか?」と訊かれたことか。

なんでも、数年前にも某出版社の編集者が入学してきたが、その人の志望動機は「発想力を磨きたい」だったとのこと。

まぁそれは表向きの謙遜で、本音では好奇心や、編集者としてよしもとやお笑い業界へのコネ作りが目的だったのではないかと思うのだが、Aさんは割とストレートに「よしもとには、発想力が求められる他業界の人間がお金を払ってでも学びに来る」という自負を持っているようであった。

仕事の話が出たこともあり、「作家コースに面白い人がいたら、(ライターの)仕事を一緒にやってみたいですね」と言ってみたら、「みんな、ほとんどは普通の子ですよ」という冷静な言葉が帰ってきた。

自分としては、雑誌によくある「お笑いコーナー」みたいな仕事を若い世代と組んでやってみたら面白いかもしれないな、と思っての発言だったが、なんだか肩すかしであった。

Aさんの「ほとんどは普通の子」という言葉の真意は、のちに悟ることになる。それはともかく、とりあえず面接はつつがなく終了した。

これも後にわかったことだが、面接といっても、これで落とされるような志望者はほとんどいないらしく、最低限の素性確認、といった程度らしい。職務質問のようなものだろうか?

未確認だけど、唯一入学を断られた応募者は、日本語がわからない外国人だけ、という噂話を聞いたが、そもそも日本語がわからないのにどうやって応募してきたのかというギモンが頭をもたげるので、単なるネタ話なのかもしれない!?

その後に合格通知的なモノが来たかどうかも覚えてないが、とにかく入学が決まり、40過ぎて小学校に生徒として通うという、なんとも珍妙奇太郎なライフスタイルが始まったのである。