
「クレイジージャーニー」でも紹介された
高野秀行氏と
中世日本史学者の清水克行氏による
時空を超えた卓上世界紀行
指定された本を読んで対談する、という趣旨の本なのだが、取り上げているのは
「ゾミア」
村井章介「世界史のなかの戦国日本」
イブン・バットゥータ「大旅行記」
「将門記」
町田康「ギケイキ」
「ピダハン」
「列島創世記」
「日本語スタンダードの歴史」
といったバラバラで脈絡がないようで、なんとなく共通点を感じるといえば感じるようなチョイス。
「ゾミア」とは東南アジアから中国、インドにまたがる丘陵地帯を著者が名付けたもの。
水稲稲作よりも焼き畑といった生活を送っていちるため古来からの先住民と思われてきたが、著者はそれに異を唱え、国家の統制や束縛を嫌って逃れた人々が選択した生活形態なのだという説を提唱。
万里の頂上は異民族の侵入を防ぐだけでなく、自国民の逃亡を防ぐためでもあったのではないかという高野氏の見立てや、「権力を避ける人々は低湿地に逃げ込む」という著者の見解に、清水氏が長島の一向一揆を例示してみせるのはさすが中世史家。
日本の話ならばサンカ伝説についてはどう考えているのか知りたかったが、こちらは触れてませんでした。
現代であれば一つの国に定住せず、仮想通貨やマネーロンダリングなどを駆使しながら生活する人間も、従来の領域国家から脱した生き方なのかもしれない。
そんな調子で二人の時空を超えた豊富な知識と経験が奏でるフリーセッションが楽しめる一冊。まずはとりあえずご紹介まで。