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鄭成功 南海を支配した一族 奈良修一(著)山川出版社

time 2016/12/14

鄭成功 南海を支配した一族 奈良修一(著)山川出版社

「海商王にオレはなる!」 と言ったかどうかは定かではないけれど 宿敵だった清の皇帝からも 忠臣ぶりを称えられた 国姓爺 鄭成功の父から孫までの生涯を描く


鄭成功 南海を支配した一族 世界史リブレット人 / 奈良修一 【全集・双書】

 戦国時代からの日本の海外交流については、南蛮貿易を中心にして取り上げる著作やメディアが多く、当時のアジアの海運や商業活動の実態についてはよく知らないままであった。

 そのため、鄭成功に興味を持っていたから読み始めた本なのに、戦国時代後期からのアジアの海洋覇権争いにより強い興味を持っている自分としては、彼の父の時代のほうに惹かれてしまった‥‥。

 サブタイトルに「南海を支配した一族」とある通り、鄭成功は父親がすでに明の皇帝から高い官位を与えられていた海商で、彼のダイナミックな活動も父が築き上げた海商グループを引き継いだからこそ可能だったようだ。

 この時代になぜ日本が鎖国に踏み切り、オランダがポルトガル・スペイン・イギリスといったライバルを排除して日本との貿易独占権を得て維持しつづけたのか、冒頭で簡潔な解説がなされている。

 16世紀になると蘇州と中心とした江南地域が経済発展し、銀経済がかなり発展したものの、明の銀鉱山は枯渇していた。

当時、世界の二大銀産地は南米ポトシ鉱山と日本で、明は日本と貿易を行わなければ銀が入手できない状況にあったという。

 ここから明国人を中心とした「16世紀倭寇」による密貿易が盛んになっていく。

 1567年に海禁令が解除されると、海商の活動が盛んになると同時に欧州の貿易商もアジアに進出してくる。

 以降、勢力を拡大してきたオランダは明との交易を望むものの成功せず、台湾に城塞を築いて東アジアの拠点とする。一方、日本とは幕府の高圧的な姿勢にも服従しつつ、交易を維持していた。

「東アジアのみならずアムステルダムから日本までをつなぐ商館ネットワークを持つオランダにとって、日本との貿易は最大の利益をあげるもので、これを失うわけにはいかなかったからである。

 当時の日本は、世界第二位の銀産出国であり、かつ世界第一の明の絹の消費地でありながら、歴史的に明を中心とする朝貢冊封体制に組み込まれることを拒否することが多かった。

 また寧波事件以来、とくに十六世紀からは明に朝貢できなくなっており、明の商品、とくに生糸や絹織物は、倭寇に代表される密貿易でしか手に入れることができなくなっていた。」

 1639年の鎖国以降は、オランダを通じて生糸や絹製品を中心とした明の商品を入手していたという。

日本は鎖国していたが
17世紀の東アジアは激動の時代

 このような時代背景のもと、鄭成功の父 芝龍は1604年に安南に生を受ける。

 マカオで海商を営む叔父のもとで才覚を発揮し、故郷である福建のビンナン語から南京官語、ポルトガル語、オランダ語まで堪能であったという。今で言えばマルチリンガルな国際ビジネスマンですな。

 次第に海商のなかで頭角を現していき、1623年平戸に来航するが、翌年台湾に本拠を移す。この年に成功が生まれているのがドラマチックなところか。

 海商たちの勢力争いを勝ち抜いた芝龍は、明の高官の地位を授けられ、オランダとの交渉~戦争に勝利して貿易権も手中に収める。東アジア海域最大の勢力になったが、その間に明は清の侵略を受けて滅亡してしまう。

 まるで水滸伝や三国志演義の主要登場人物のような生涯である。

 芝龍も清に降伏して当初は厚遇を受けるものの、告発を受けて投獄された挙句処刑される。

 もの凄く波乱万丈というかダイナミックな生涯を送ったわけだが、鄭成功も父の意志を受け継いで清に反逆しつづけた‥‥というわけでもないらしく、芝龍はあくまでも商人だったろうというのが著者の見解で、その息子の鄭成功がなぜ生涯に渡り明に忠義を尽くしたのかはよくわからないようだ。

 朱子学の影響もあったのか、明への忠義心は父よりも遥かに強く、清の皇帝からもその忠臣ぶりを称えられたというが、これは生まれつきの性格によるものか、それとも母親が日本人(平戸藩士の娘)ゆえのナショナル・アイディンティティ的な葛藤があったのか‥‥と気になるところ。

 清には勝てなかったものの、オランダから台湾を奪還する活躍で後世英雄と称えられることになった鄭成功だが、人間的にはズバ抜けた賢人というわけでもなかったようで、著者は判断力や指導力について疑問を呈してもいる。

 後を継いだ息子の鄭経は台湾王といった地位にあったというが、その二男の代で清に降伏する。
 
 書籍としては、東アジア激動の時代、4代に渡り中心的人物となった鄭一族の歴史が纏められたリブレットになります。

 余談をすると、当時、西欧列強国はアジアの拠点防衛のために日本人傭兵を雇っていた。
それならば台湾城塞にも日本人の侍がいて‥‥という小説が新宮正春さんの『ゼーランジャ城の侍』で、興味ある方はご一読を。

 ワタシもそういう興味から戦国時代末期の東南アジアの日本人傭兵に興味を持って調べているのですが、当然資料が少なくなかなか進展しませんのです‥‥。

 


ゼーランジャ城の侍 (集英社文庫)

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