古代アレクサンドリア図書館と視聴覚室の収蔵資料目録

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日本海海戦の真実 野村実(著) 吉川弘文館

time 2016/09/25

日本海海戦の真実 野村実(著) 吉川弘文館

日露戦争の武勲艦・三笠率いる連合艦隊がバルチック艦隊を破った日本海海戦は世界の海戦史に刻まれている。

だが、海戦の経過は資料によって食い違っており、T字戦法が発案・実行されるまでの経緯も不透明な部分があるという。元海軍(端鶴、武蔵乗組員など)で戦後は防衛庁で海戦史を研究していた著者が、そういった疑問を著者が新発見の資料などで検証したのが本書である。

1999年に講談社新書で刊行されたが、読者の高い評価を得ながら絶版となっていたため、このたび吉川弘文館により再販された。初版の刊行から二年後に鬼籍に入った著者の、後世への遺言ともとれる著作となっている。

日本海海戦の経緯は司馬遼太郎のベストセラー小説『坂の上の雲』によって巷間に流布されたものが広まっているが、第一章からそれを検証し否定していく。

防衛研究所に所蔵されていた『極秘明治三十八年海戦史』という極秘資料で著者が知りえた記録から、東郷提督はバルチック艦隊の対馬海峡通過を確信していたわけではなく、T字戦法を発案したのも秋山真之ではないといった説を提示し、“神話”を解体して“史実”を示そうとする。

東郷が神格化されてしまったことが、その後の日本海軍に過ちを招くことになったのではないかと締めくくるのだが、その姿勢は、大正11年に生まれ、連合艦隊の乗組員から兵学校の教官ーー若者の教育者として敗戦を経験した人間の責任感もあるのだろうか。

自分は三笠のある横須賀市の隣の三浦市で育ったので、子供の頃から三笠に度々乗艦(?)していた。宇宙戦艦ヤマトが流行っていたこともあり、当時の男児は連合艦隊のプラモデルなども熱心に作ったものだ。最近はNHKの番組で「艦これ」のコスプレ撮影で三笠が人気だと紹介していたが、それが事実だとしたらサブカルチャーから歴史に興味を持つきっかけも世代ごとに更新されているということか。

横須賀では米海軍の艦艇や海自の護衛艦に乗艦できるイベントが度々開催されているが、今のステルス性重視の外観の艦艇ではコスプレ写真の背景としてヴィジュアル的にイマイチなのであろう。

大艦巨砲主義が醸し出す魅力は、戦艦の見た目の勇壮さも相まっていたのではないかと半分冗談かつ半分本気で思ってみたりするのだが‥‥三笠の前で双眼鏡を持って立ち続ける東郷提督像は、かつての栄光から過酷な運命を辿ることになったその後の連合艦隊さえも自己表現のアイテムとして楽しむ世代の婦女子たちを見て何を思うのか‥‥。

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