古代アレクサンドリア図書館と視聴覚室の収蔵資料目録

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吉田類の酒場放浪記 9杯目 吉田類 吉田慎治(著)

time 2016/08/03

吉田類の酒場放浪記 9杯目 吉田類 吉田慎治(著)

九州・嬉野温泉を巡る酒場放浪記で
坂本龍馬を支援した女傑 大浦慶を知る

いまや日本を代表する(?)酔客となった吉田類の人気シリーズ9作目。巻頭特集は“龍馬の足跡を辿る”ということで長崎街道沿いの温泉地・嬉野温泉を訪問して居酒屋ののれんをくぐる。

坂本龍馬が勝海舟とこの地を訪れたのは、アメリカ・フランス艦隊に長州藩がボコられた下関事件の調停のためだという。
検索してみると、元治元年二月に千屋寅之助、望月亀弥太、近藤長次郎も同行して長崎に向っている。
この後、龍馬は勝の命を受けて熊本の横井小楠を訪問しているとある。

嬉野宿には茶の輸出貿易で財をなした大浦慶という女豪商がおり、長崎三女傑に数えられている。
NHK大河ドラマ『龍馬伝』にも登場し、余貴美子が演じた。
幼少の頃に叔父の家の婿養子となるが、叔父は亡くなるわ大火事に遭うわで没落、17歳で結婚するも一晩で離婚し生涯独身だった。

龍馬など幕末の志士をよく支援したといい、その一方で艶聞も多かったというが、この時代に“ビジネスで成功して財をなした独女”だけに下世話な噂好きの格好の的になったであろうし、果たしてどこまで真実だったのか。

幕末の志士も含め、まぁ今でいえばベンチャービジネスの世界に蠢く、なんだか怪しげな野心家どもだと庶民には思われていたのかも知れない。

そんな慶だが、維新後は騙されて財産を失い、膨大な借金の返済に追われたが、アメリカ大統領来日時には国賓になったりしつつ、最後は明治政府から賞を授かり57歳で亡くなる。

波乱万丈の人生だけに白石一郎といった有名作家にも小説化されており、大河ドラマ出演のみならず、NHKの朝ドラ主人公候補にエントリーできそうな履歴の持ち主ですな。

他は東京近辺の居酒屋をいつものように紹介。

吉田類さんの本職はイラストレーター&俳人だそうですが、全国津々浦々、酔旅を続けつつ俳句を詠むという羨ましき人生はある意味現代の若山牧水ともいえる。もっとも牧水は40代半ばで亡くなっており、飲酒が原因というわかりやすさ。いくら酒好きな男でも、遊びやストレス発散ではなく、仕事で酒を飲み続けるのはなかなかタイヘンに違いない。
同時にこのシリーズを支えるのは取材・撮影の吉田慎治氏のプロの仕事ぶりであろう。明るさもバラバラで狭い店も多い居酒屋の店内で、とかく似たような写真になりがちな居酒屋の個性や雰囲気を伝える写真を撮り続けるのは、磨かれたプロのスキルが必要だからだ。

名店と称される居酒屋の大将、店員も一見地味で目立たないがプロの仕事師であり、それを写し出すカメラマンもまたプロの仕事師なのであろう。

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