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信長軍の合戦史 1560-1582 渡邊大門(編) 日本史史料研究会(監修)吉川弘文館

time 2016/09/18

信長軍の合戦史 1560-1582 渡邊大門(編) 日本史史料研究会(監修)吉川弘文館

桶狭間の戦いは奇襲じゃないって本当?
鉄砲の三段撃ちと武田騎馬軍団って事実なの捏造なの?
家康の「変顔イラスト」が家康じゃないってマジかよ?
結局、本能寺の変の原因って何なんだよ?
最新の研究成果を知りたければ読みんしゃい!

 

「革新的な天才」という信長のイメージも、今ではかなり見直しや修正が進められている。
軍事面においても、「奇襲により寡兵で大軍を破った桶狭間合戦」「鉄砲の三段撃ちで“武田騎馬軍団”を破った」という広く浸透した説も、「信頼性の高い史料で本当に検証できるのか?」と疑問を感じた研究者が調べてみたら、どうも変だぞ‥‥ということで様々な異説が唱えられるようになっている。

そういった「信長軍の合戦史」について、現在までの最新の研究成果を紹介するのが本書である。

桶狭間から本能寺の変まで11の合戦が取り上げられているが、タイトルに「信長軍」とある通り、信長が現場で指揮を執った合戦ばかりではなく、三方原合戦や秀吉を司令官として派遣した中国方面の戦いも含んでいる。

ざっくりと挙げれば

・桶狭間は藤本正行説を中心に検討。

・美濃斉藤氏との戦い。稲葉山城落城はいつか‥?

・石山合戦の論点の整理と全体的な経緯

・姉川合戦は浅井勢による信長本陣への奇襲説を提示

・三方原は、昨年話題となった「家康しかみ像」の新説と、信長と対立する義昭の思惑などを概説

・史料の少ない長篠合戦を巡る「鉄砲三段撃ちvs騎馬突撃」の論点の整理

・三木合戦、有岡城攻めでは、別所と荒木の謀反原因を検討。別所は当時の政治的状況による判断、村木は家臣団の編成(評価の不公平さというべきか)への問題と捉える。
「信長に逆らった先見性のない愚将」といった評価は「後出しジャンケン」ができる後世の我々の結果論であって、この時点では「信長の天下統一」を確信できるほどの状況ではなかったのだろう。
また個人的には、“統一戦争の大義”といったものを信長はどのように家臣に示し、それを彼らはどれほど理解し、意義を感じていたのかというテーマにも興味を覚えた。

・鳥取城攻防戦における兵糧確保と戦災復興を解説。戦国自体における“兵站”と“復興”はいかに為されたのか。「俺は“武将推し”だけじゃなくて“歴史が好き”なんだ!」と自認する方は読んでおくべき章でしょう。

・「合戦史」を補足するものとして宇喜多直家の服属と信長からの評価。
“表裏者”直家を信用せず、厳しい評価とともに秀吉にプレッシャーを掛ける信長。「信長は冷たいイメージが強いけど、本当は優しいところもあったんだよ~」といった安直なテレビ番組を返り討ちにするようで面白い。
信長は毛利と講和して従属させる路線を考えていた。それを示すことによって、地位低下を懼れる秀吉と直家の奮闘を促すこともできるという解釈であるが、「どっちに転んでも俺の野望達成に近づくんだよね~♪」と思っていたであろう信長の“冷徹なトップの思考”がエグいですな。

・信長の思惑通りか(?)水軍を調略したり高松城を水攻めしていた秀吉だが、そこで本能寺の変を知る。高松城は致命的な状態ではなかったというが、毛利氏は持久戦に耐えるだけの物資輸送手段に窮していたため、秀吉軍を追撃できる状態になかったという。また毛利氏にとっても高松城は“絶対国防圏”ではなかったという。

運命論や陰謀論で語られがちな中国大返しだが、毛利氏側にも確固たる「できない事情」があったということか。

終章は本能寺の変 現在までの主な論点をまとめてあり、「18ページでわかる本能寺の変」というべき章。現在最有力の「四国説」における石谷家文書の解釈にも触れられており、“本能寺の変アプリ”といったものがあれば最新バージョンだと思います。

絶え間なき成果主義のプレッシャーを掛けられる家臣の反逆に遭ってきた信長だが、そのたびに「俺様に逆らって勝てると思うなよ」と返り討ちにしてきたためか、自らに油断を許すようになり、その野望とともに炎の中に消えていった。

‥‥という感想は「ボクの考えた織田信長」であって、これも真実なのかどうかはまったくわからない。ということで今後も信長研究の一層の発展を楽しみにしております。

欲を言えば信長の合戦を検証するうえで重要だと思われる“兵農分離”の実態の研究成果にも触れて欲しかったところですが、この本の売れ行き次第で合戦以外を扱う続編も検討されるかもしれませんので、首を長く‥‥いや短くして期待しています。

※本能寺の変アプリにはニセモノがあり、最悪の場合はスマホが発火して炎上してしまうらしい。

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