古代アレクサンドリア図書館と視聴覚室の収蔵資料目録

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ディズニーを目指した男 大川博 -忘れられた創業者- 津堅信之(著)

time 2016/09/15

ディズニーを目指した男 大川博 -忘れられた創業者-  津堅信之(著)

「大川博」という名を聞いて「東映の創業者か」とすぐに思い浮かぶ人は、邦画通か業界関係者、あるいはオールドプロ野球ファンに違いない。
自分自身、「日本映画の歴史」みたいな本に名前が出てくる東映の社長、くらいの知識しかなかった。

タイトルに「ディズニーを目指した男」とあり、頁をペラペラ捲り読みするとワンマン経営者という言葉が目に入ってくる。

昭和の映画会社の社長、それも東映の創業者で辣腕を振るったワンマン社長、とくれば期待度は急上昇。
本の厚みも短すぎず長すぎない208pなので読んでみることに。

テレビで「日本のアニメの歴史」的な解説があるとよく出てくる「白蛇伝」という作品がある。
昭和33年の公開時、白蛇伝の予告編でスピーチを行う大川の描写から序章が始まり、劇場用長編アニメが「国際性を持っている」ために「世界に広く進出したい」と宣言する大川の先見性が語られる。

アニメが「漫画映画と呼ばれ、東映動画(現:東映アニメーション)という社名すら目新しかったという時代であった。

とかくクリエイター側の視点ばかりで語られ、歴史が残っていくことが多いコンテンツ業界にあって、経営者は「予算を削る」「商業性を重視する」“悪者”として不当な評価を受けてしまいがちである。
この本のように、経営者の視点から日本の映画アニメ史を捉えなおそうとする試みは意義深い。

明治29年生まれで少年の頃からソロバン自慢だった大川は、鉄道学校を卒業して鉄道省に入省。

そこから東急の五島慶太にヘッドハンディングされ、運命が大きく転換していく。
経理の強さを買われ、大きな仕事を任されていく大川だが、それゆえにグループ内でお荷物的存在だった映画会社の社長に強引に任命されてしまうのだ。

これで東映が誕生するのだが、さらに野球に興味がなかったにも関わらずプロ野球に先見性を感じ、プロ野球球団を買収して東急フライヤーズを誕生させ、パリーグ初代会長にも就任。

同時に負債11億円(当時の金額で!!)を抱える東映の建て直しに奔走、という雇われ社長ながらも孫正義ばりの(?)辣腕を振るうのである。スゲーですな!

東映での製作現場との衝突とアニメーションへの注力は、好事家が読みたい核心部分でしょうから省きますが、とにもかくにも大川のソロバン弾きで経営の合理化が図られたことで東映という会社は存続し、現在まで数多くのクリエーターを輩出してきた歴史が続いた。

著者は忘れ去られつつある功労者として大川博伝の企画を出版社に提案したと思われる。(あるいは出版社側からの提案かも?)。

しかし、冒頭に書いたように知名度の低い人物の伝記に興味を持つ人間は少ない。
そこで「ディズニーを目指した男」というサブタイトルにしたのだろうが、著者自身がそのサブタイトルを否定するような見解を終章で示している。

こういうサブタイトルの付け方は、話題になりにくい本を出す時のお約束のようなものだから、そこに目くじらを立ててはいけません。

よくアマゾンレビューなどで内容自体は良書なのに、「タイトル、サブタイトルと内容が違う」と怒って低評価を付けている購買者がいます。

自分も本・映画などで同じような感想を抱いたことが数え切れないほどあるので気持ちとしては充分に理解できますが、このサブタイトルくらいの違和感であればご寛恕を願いたいところであります。

この本のように、日本の映画・アニメ史における重要人物の検証が進むことが、より重要であるのだから。

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