古代アレクサンドリア図書館と視聴覚室の収蔵資料目録

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セルビアの魔女狩り AbemaTV『VICE』

time 2016/09/01

セルビアの魔女狩り AbemaTV『VICE』

「中世の魔女狩りが現代にも!?」的な期待をして見るとガッカリしますが
内容はなかなか興味深いので
民俗学や宗教学といったジャンルに興味ある方向けの内容でしょうか

番組表のタイトルを見て「複雑な歴史を持つセルビアで、セイラムの魔女のような魔女狩り事件があったのか!?」と興味を惹かれて見たんですが、結論を先にいうと想像とは違うレトリックなタイトルに「釣られて」しまいましたわ‥‥。

とはいえ、コレはコレで興味深い内容だったので記しておきます。
セルビア東部には現代でも魔女、というより伝統的な占い師がまだまだ存在していて、彼女たちの 実像を取材するといった内容です。(それが「魔女狩り」ということ!)

「1690年、ルーマニア人の移住によりヴラフ人特有の文化が生まれた」というセルビア東部。ヴ ラフ人の文化は現代のセルビア社会にも大きな影響を与えているとか。

民俗学に詳しいという学芸員を伴い、取材者が最初に訪ねたのはルーザ婆さんという占い師。 占い師は「BABA」と称されるようで、彼女は「ババ・ルーザ」と紹介されていた。

占い師というより、どこにでもいるオバちゃんといった雰囲気の彼女は占いに穀物を使い、「坊や お前の目は小さい」「オマエは女に餌もやらず」などといったやや象徴的な言葉で取材者を占う。具 体的な何かを占うというより、少々神秘的なアドバイスといった感じかな。「ババ」にはタロットを 使う人もいるそうだが、そう言われてみるとタロット占い的なアドバイスのようにも聞こえる。

 
次に向かったのは、ドゥルカという街の外れにある洞窟。小川がいくつも流れる森の中にあり、ここで死者を弔う儀式を行っていたという。

まだ初潮を迎えていない女性や子供に水を注がせるという儀式だったそうだが、かつての秘儀も近代化の流れには抗えなかったのか後継者不足だったのか、1960年代を最後に途絶えてしまったと いう。

失われた秘儀の森‥‥なかなか感慨深いものがありますが、取材者が森の入り口に戻ると車の運転手がいない! 携帯の電波も入らない田舎で立ち往生する取材者。聖地を荒らしたバチが当たったのであろうか!? 一時間後にようやく戻ってきた運転手曰く「コーヒーを飲んでいた」というノンキな理由でした。田舎町ゆえにコーヒーショップも遠いようですな。

 
今度は山村風景のなかを車で進み、ツルナイカという田舎町の丘を徒歩で登っていく取材者たち。
丘の上にはデサンカ婆さんという占い師が住んでいるのだが、彼女の家も携帯電話の電波が入らない街外れにある。

「ババ・デサンカ」は撮影NGということで占いそのものは見れないのだが、「前に進む努力をすれば貴方の体は地球と一体になっている 死んでいるわけではないがその中間にいる」。「自分の命と金に気をつけろ」といった詩的というか、ファンタジー作品の占い師が言いそうなことを取材者にアドバイスしてくれたそうな。

最後に訪ねた「魔女」は、スロボダンガ婆さん。彼女も街外れに住んでいる。コップと食器? を遣い、その中に炭を入れたりするいわくありげな占いを行う。「あなたは生き地獄を味わうかもしれない」などと恐ろしげなことを言い、「飲めば翼を取り戻し、魂が救われる」と魔法のドリンク? を取材者に処方するのであった。彼女に言われた通り、家を出て橋の上から何かを川に流す取材者の姿は、おまじないを信じる子供のようでもある。

彼曰く「彼女たちは街のすご腕カウンセラーだ」。「祭壇で儀式を行う彼女の顔を見ても決して欺いているとは思えない。」と占いは真摯に行われていることを体感したようだが、「だが、よく知りもしない相手に心の中を覗かれるのは、大勢の前で裸を見られているようで、あまり愉快な気分ではない」と心情もチラリ。

視聴しながら筆者が感じたのは、彼女たちは我々がイメージする魔女といったおどろおどろしい存在どころか、沖縄のユタや恐山とイタコといった民間シャーマンよりももっと身近な、村の「拝み屋さん 」「占い婆さん」みたいな存在だったのではないかと。
「なぜ、みんな辺鄙な場所に住んでいるんだ?」と取材者も語っているが、古きモノは辺境に残るということであろうか。

とはいえ、中世のキリスト教会では彼女たちはどういう存在として扱われていたのかという疑問も湧いてきた。「魔女狩り」が盛んだった時代には、この程度の占い師でも魔女扱いされてしまったのではないだろうか?

長く受け継がれてきた(ように思える)彼女たちの占いだが、メソッドもバラバラで体系化されていないように見えたし、この取材ではみな高齢者だった「魔女」の後継者は存在するのだろうか? セルビアの田舎町に携帯電話の電波が届くようになった頃には、あの洞窟で死者を弔う儀式のように途絶えてしまうのかも知れない‥‥。その時には、この映像が貴重な記録として残るのであろう。

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