古代アレクサンドリア図書館と視聴覚室の収蔵資料目録

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『宇宙怪物(ベム)図鑑(復刻版)』

time 2016/09/04

『宇宙怪物(ベム)図鑑(復刻版)』

宇宙人ヴィジュアルデザインの「カンブリア時代」

生み出された人間の想像力の限界に挑む造形の数々
しかし、ガキ向けの俗本と見せかけて
宇宙SFの名作をこれでもかと紹介するあなどれぬ一冊

地元の図書館に返却&レンタルに行って返却本トレーに目を遣ると、場違い感溢れるおどろどろしい表紙に目を奪われて思わず手に取ったのがコレ。我々がガキんちょの頃の男子魂を揺さぶってハイテンションにさせた数々の『図鑑』を発刊していた立風書房のジャガーバックス・シリーズを『復刊ドットコム』が復刻した一冊であった。

冒頭で「BEM=Bug eyed monster 巨大な昆虫のような眼をした怪物という意味である」といかにももっともらしい解説があるのだが、編集者的には「『宇宙人図鑑』ではイマイチ売れ無そうだなぁ。よし、『妖怪人間ベム』を連想させて子供の気を惹こう! ベムだベム!」という目論みがあったに違いない。しかし、それはこのシリーズの編集方針としては極めて正しいと全面同意したい。

この手の本の最重要要素であるイラストは、小井戸繁、つだかつみ、藤井康文が担当。子供の「夢に出てきたらうなされそうな」感も押さえているものの、どちらかというと全体的にユーモラスな印象を与えるタッチが多い。しかし、イラストレーターの方々もこれだけの数の宇宙怪物のイメージを描き分けるのは大変だったでしょうナ‥‥。

『2001年宇宙の旅』で有名な『モノリス』がタダの長方形の黒いカタマリなのは、「今まで人間が想像したこともない宇宙人を創造しよう」とキューブリック監督がスタッフと「あ~でもない、こ~でもない」と悩み抜いた挙句「人間が想像したこともないものは、そもそも想像できなかったんや!」ということに気づいて結局ああいうデザインになったことは有名だが、この本の宇宙人イラストも爬虫類&両生類型か海や水中の生き物みたいなデザインに似通ってしまうのは仕方ないことなのであろう。

まあ個人的に思うのは、あらゆる環境に適応できる生物の姿なら、地球上の生物で最も多様な環境に適応している昆虫に近い姿になりそうな気がするのだが、それでは人類の最大のライバルとしての知的生物っぽさを感じにくいので、キャラクターデザインとして読者視聴者ウケが悪く作品もヒットしにくいのであろう。宇宙人というより仮面ライダーの“怪人”になってしまいそうですな。昭和ライダーの「悪の組織」もお偉いさんは人間型が基本ですからね。

お次にイラストから本文に目を向けると、これが驚くほど名作SFの紹介オンパレードといった内容になのだ。宇宙戦争からソラリス、宇宙船ビーグル号やスタートレックにレンズマンなど正直SFには全然詳しくない自分でも知ってるようなタイトルを続々と紹介しまくる。ガキを宇宙人イラストで釣り、SFに興味を持ったいたいけな少年をSFヲタの道に引きずり込もうというライター陣の陰謀すら感じられるほどだ。

で、巻末の参加ライターの名前を見たら、志水一夫さんも参加してるんですな。と学会の人です。

「70年代までの有名宇宙SF作品の知ったか用アンチョコ」としても活用できそうな一冊ですが、お値段を見たらなんと3700円! いや、高い! ‥‥と言うなかれ、これこそかつての少年が「大人買い」すべき一冊なのであろう、きっと。で、オマエは買ったのかって? いや、自分は‥‥子供の頃に味わった「買いたいけど買えない‥‥」という気持ちが再び蘇ってきましたよ‥‥押忍!

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